シノちゃんVOICE Voice.2(レアル・ルチャリブレ・スクール)

レアル・ルチャリブレ・スクール

シノちゃんVOICE Voice.2(レアル・ルチャリブレ・スクール)

日本で唯一のルチャリブレのスクール、ルチャの魂と技を伝えます。

レアル・ルチャリブレ・スクール

 糸島にプロレスの学校、しかも「ルチャリブレ(メキシコスタイルのプロレス)」を教えているらしいと聞いて、思わず取材してきました。きっと荒々しくごっつい男達が集まっていると思ったら、割と平均的日本人体型の大人たちやかわいい小学生が汗を流していました。しかも、礼儀正しくて、見るからにいい人たちの集団でした。しかし、試合になると…

少年時代の夢

 今から32年前プロレスラーになりたいという夢を抱いた17歳の少年がいた。少年は日本のプロレス団体に入門したいと思ったが、身長や体重等、入門試験を受けるための規定に、自分の体格が届かないことを知った。夢が閉ざされた思いだった。そんな頃にプロレス雑誌にメキシコのプロレス、ルチャリブレの特集記事が載っているのを発見した。「ああこれだ。小柄の人でもレスラーになれる。メキシコが俺を呼んでいる。」と思った。

 少年はメキシコに渡ることを決意し、20歳まで陸上自衛隊で働き、体を鍛えながらメキシコでの生活費や渡航費用を貯めた。 そして22歳の時、念願のメキシコへ渡り、あの雑誌で観たルチャリブレのジム「クラブ・アトレティコ・ハム・リー」を探し当てて入門した。 日本から来た初めての入門生として、プロのルチャドールに成るために、夢中で技を覚えていった。お金が無くなると日本に戻って働いて、またメキシコに渡ってルチャの修行をするということを繰り返した。3年経ってもジムの師匠からはまだプロのルチャドールになるためのライセンス取得試験を受けさせてもらえなかった。

 そして、3回目にメキシコに渡った1991年、今度こそライセンス試験が受ける許しをジムの師匠に認めてもらい、プロライセンスを取ってやると決心していた。俄然練習にも熱が入り、練習に力を入れた。ついにジムの師匠に試験を受ける許しを得た。

 プロライセンスの試験はコミッションの立会いのもと、長距離を走ったりする持久力を試す試験と、ルチャの技術を見せる技術試験が有り、80点満点で60点以上の取得で合格となる。当日メキシコシティのジムから選手が43人受けて、たった3人しか合格しなかった。その3人の内の一人があの少年だった。しかも日本人で初めての合格者だった。

 少年は26歳になっていた。日本から雑誌社が取材が来て、自分のプロ試験に合格したことを実感した。そしてメキシコのプロのリングに上がった。日本人初のプロルチャドール「磁雷矢」の誕生である。少年のプロレスラーになるという夢はこのとき叶った。

レアル・ルチャリブレ・スクール 磁雷矢
レアル・ルチャリブレ・スクール 磁雷矢

次なる夢のこと

 それから約9年間メキシコのリングで日本人初のルチャドールとして活躍した後、2000年磁雷矢さんが日本に帰国した。しばらくは九州のプロレス団体でフリーの選手として試合を行った。 ルチャといえば空中戦ばかりがクローズアップされる。しかし、数百種類以上あるジャべと呼ばれる関節技や決め技が多くの玄人ファンに好まれる。

 磁雷矢さんはジャべが得意で、その技を日本の人にもっと知って欲しかった。日本には自分と同じように体格が小さくて、レスラーになることを諦めている人や本物のルチャリブレを楽しみたいと思っている人がたくさんいるはずである。そういう人がメキシコに行かなくても日本で学べる場所を作りたい。これが磁雷矢さんの次なる夢となった。

 それから2009年に実現したのが姪浜に開かれた「レアル・ルチャリブレ・スクール」である。2011年に糸島に移転し、常設のリングが設置された。レアル・ルチャリブレ・スクールはみんなが楽しめる場所で、自分なりに誰でもできるルチャリブレをモットーとして、現在10数人のスクール生が火木土の週3回このスクールに通っている。

愉しくて止められない

 今回8歳から47歳までの13人のスクール生さんになぜルチャリブレをやっているんですか?と尋ねてみた。30代、40代のスクール生は「子どもの頃憧れた、タイガーマスクみたいになりたかった。」、それ以下の年令の生徒さんだと「まさか自分がマスクをかぶってリングに立てるとは思わなかったが、体験入門してみて、はまってしまった。」「磁雷矢さんの人柄に惚れてしまった。」という答えが多かった。

 それぞれの生徒さん達は自分のマスクを作り、リングネームを付けてもらい、自分のルチャの技やキャラクターの表現を研いている。内気だったけど明るく積極的になった。仕事で営業成績が上がった。自分が好きになったなど別のプラス面を語るスクール生もいた。4時間かけて大分から通って来る人もいるし、小学生や幼稚園の園長さん、飲食業の店長、普通のサラリーマンなど職業も皆様々だ。しかしみんなが共通して「ルチャはきついけど愉しくて止められない。」と語る。 磁雷矢さんが「自分からルチャを取ったらゼロだ。」と言うくらいルチャにかけた情熱や魂が、確実にスクール生達に伝わっているようだった。

レアル・ルチャリブレ・スクール
レアル・ルチャリブレ・スクール

所在地:福岡県糸島市高田5丁目24-3 [地図はこちら]
TEL : 092-203-2828 HP : http://www.real-lucha.com

編集後記

 私は子どもの頃他の子どもよりチビで痩せてて泣き虫だった。だから勇気を持った力強いテレビのヒーローにあこがれた。今回、マスクをかぶり本物のリングで愉しそうにルチャリブレをする小学生を見た。子どもの頃にこのスクールが有ったなら私は迷わず通っていたと思う。(取材・撮影・編集・デザイン嶋崎)

シノちゃんVOICEについて

 読売センター所長の篠原です。読売新聞の配達人が作るミニ新聞の第2号ができました。地元の人にもっと地元の情報を伝えたいと思って作っています。今回の「シノちゃんボイス」でご紹介するのは、メキシコ流のプロレスの「ルチャリブレ」のスクールです。日本では糸島のここだけしか無いそうです。マスクをかぶったプロレスラーというとタイガーマスクとかを想像しますが、一体どんな人たちが何をやっているのかをレポートさせていただきます。

2014年4月5日号
発行/篠原清隆
読売センター
今宿・周船寺・姪浜・志摩・前原・吉野ヶ里
編集人/嶋崎達哉
福岡市西区今宿駅前1-5-5
TEL 092-806-0461
FAX 092-806-0463