コーヒーブレイク

■コーヒーブレイク

　食卓の独り言

　吾輩はT家の食卓である。

　この家の主である夫婦がこの家を建てた時にバーゲンセールで買い求めた。

　家を建てたばかりの夫婦にはお金がなくて、新しい家のために唯一買い求めたのが吾輩だった。

　4人家族には大きめのしっかりとしたつくりの無垢材のテーブル。

　それから20年。

　吾輩はこの家のリビングの中心でこの家族を見守り続けてきた。

　その頃はまだ2人の子ども達も小さくて賑やかだったね。

　子どもの友達やママ友が頻繁にやってきて、やれランチだ、誕生会だと狭いキッチンで作られたご馳走？がこの食卓の上に並べられたものさ。

　そうそう、その頃はママ友の間に手作りが流行って、皆で集まってこの食卓の上は色とりどりの布切れやビーズで溢れ、様々な作品が生まれた。

　懐かしいなぁ。

　今は子ども達もそれぞれに独立して、大きめの食卓は夫婦2人の食卓になった。

　健康志向なのか食卓上に並べられる食事も彩どりがいまひとつ。

　最近はノートパソコンが置かれて食卓というより、奥さんの仕事机になっている。

　言っておくが奥さんは自分用に小さな机を持っている、でもこの上で仕事をするほうが落ち着くらしい。

　我が家の奥さんは忙しいが口癖がある。

　忙しいと言いながらいつもややこしい仕事を引き受けてくる。

　月に一度、今宿タイムズの割り付けと校正も引き受けている。

　これがとてつもなく厄介だ。

　何しろこの食卓いっぱいに原稿やら割り付け用紙やらが置かれて、ご飯を食べるスペースもない。

　時間がかかるし、イチイチ片づけるのが面倒みたいで、割り付けのある2日間はそこでご飯は食べられない。

　我が家のご主人は隣に置いているソファー前の小さなテーブルでご飯を食べる有様だ。

　しかもその不自由な生活にもすっかり慣れた様子で今日はこっち？などと聞いている、なんて情けないことだ。

　何だかんだとこの20年、吾輩はこの家にあって重宝されてきた。

　これからもこのリビングで生きていくつもりである。

　いまのところ、代替わりの予定はない。

（T）

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■平成28年(2016年)12月1日今宿タイムズ411号