コーヒーブレイク

■コーヒーブレイク

　友達と一緒にやってきた東京。

　就職し一人暮らしする子ども達の様子見と、ついでに鎌倉にでも行こうという計画だ。

　息子達との待ち合わせの池袋に向かう途中LINEをすると「既に着いてる」という次男とは対照的に一向に「既読」にならない長男。

　嫌な予感だ。

　友達親子はすぐに合流し、「どうせ行っきらんめーもん」と待ち合わせ場所に連れて行ってくれた。

　次男と共に二人を見送ると、予想通り寝起き感半端ない寝癖頭の長男登場。

　1年10ヶ月ぶりだ。

　とりあえず雰囲気のいいハンバーグの店でランチすることにした。

　長女の結婚前の両家の顔合わせ等帰省の日程の確認を終える頃、料理が来た。

　次男が微塵の躊躇もなく選んだ増量のハンバーグセットも。

　昔はお互いに憎まれ口をきいていた筈の目の前の二人は、仕事や就活等話が尽きない。

　一人蚊帳の外の私だけど何だかじんわり嬉しくなった。

　お正月は長男の家で過ごす事になっているらしい。

　何か美味しい物を送ってあげよう。

　食後、長男はさっさとレジに向かった。

　私が財布を出すのを止め「社会人だからね」と支払を済ませた。

　また少し嬉しくなる。

　今からどこ行く？と思った矢先次男が「忙しいけん帰るわ。ところで…」と増量ハンバーグと交通費をゲットしてとっとと帰っていった。

　と、追い打ちをかけるように長男から「おかん、2時間位遊んで来て。掃除してないんだよね」との言葉。

　手伝うと言う私に「いやいやお客様にさせるわけには」ってお客様が来る前に済ませとかんかい！

　ああ息子なんてこんなもんだよ。

　と私は右も左もわからない池袋をうろついてパンやらお惣菜だの買って、きっかり2時間の成果がこれなら元々はどれ程だったのか。

　片付けつつ私の知らない息子の生活が垣間見えた。

　翌日、友達と鎌倉散策する道すがら、前日の話題になった。

　友達は娘と川越で食べ歩きしたのだそう。

　羨ましい。

　話が昨日の我が家のランチ後の件にさしかかると「池袋に置き去りかい！」と笑った。

　常にハキハキ物申すその豪快さが、目の前の運慶作と伝わる円応寺の閻魔様と重なる。

　そのお顔は、何故か笑っているようで私はやっぱり嬉しくなった。

（Ｒ）

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■平成29年(2017年)1月1日今宿タイムズ412号